研究概要 |
材料の力学的性質は変形の不均一性を抑制することにより理想材料のそれに近づく。これは引張強度のみならず、クリ-プや疲労強度においても成り立つ。さらに、この不均一性は複合材料の強度や靭性についても最も重要な要因である。従って,材料の力学的特性を向上させるためには、変形が均一に生じるような工夫を組織に施すことが必要となる。今年度は、その工夫の一つとして、現在最も注目されている組織の超微細化と界面制御に焦点を合わせて、その実験的検討をアルミナ・ハフニア系を用いて行った。すなわち、粒成長を抑止する目的で添加したハフニアとアルミナ地相との相互作用を超高圧電顕法によって調べた。予備焼結された試片を、ダイヤモンドペ-ストを用いて機械的に研磨したあとイオンエッチング装置にかけて、膜厚約5μmの透過電子顕微鏡用の薄膜試料を得た。観察は、加速電圧2000kVで行い、2300Kまでの加熱が可能な高温ステ-ジを用いて試料処理を行った。像の動的記録には、オルシコンカメラによるTVーVTRシステムを利用した。その結果、(1)2100K近くの高温では、ハフニアは容易にアルミナ地相中に固溶する、(2)この固溶はアルミナの結晶粒界上で優先的に生じる、(3)しかし、温度を2000Kまで低下させるとハフニアは再びアルミナの粒界上に析出する、(4)このような固溶と引きつづく析出は、温度を上下させると同一箇所で何回も可逆的に生じる、(5)このアルミナ粒界上に析出したハフニアは、多くの双晶を含む単斜晶である、等の諸点が明らかになった。 この知見は,アルミナの微細組織を制御するうえで貴重である。
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