研究概要 |
不斉触媒反応の新たな化学的展開を目指して、有機リチウムを炭素求核剤とし不斉配位子を触媒として用いる触媒的エナンチオ選択的不斉合成の開発を検討した。 隣接した不斉炭素を持つ2,3ージフェニルエチレングリコ-ルのジメチルエ-テルは、有機リチウムに配位すると五員環キレ-トを成形する。エ-テル酸素原子のメチル基はフェニル基との立体反発を避けてトランス配置をとる。その結果、キレ-ト面の上下左右に位置を定めて固定され、有効な不斉空間が構築される。リチウム原子への基質の配位を契機として起きる反応ではリチウム原子に隣接するエ-テル酸素上のメチル基が絶対配置制御機能を発現することになる。 キラルジエ-テルの存在化トルエン容媒中、有機リチウムは芳香属アミン由来のイミンと反応し、1,2‐付加体を収率よく与えた。しかも光学純度も90%以上と高く期待通りの機能が発揮されていると推測された。生成不斉炭素の絶対配置は有機りチウムを2分子含むモデルから予測したものと一致した。 当量以下のジエ-テルの存在下でのイミンを基質とした反応では、幸いなことに触媒回転が実現されることが分った。5mo1%のキラルジエ-テル存在下でも不斉触媒反応が進行し、40%eeで1.2‐付加体が得られた。触媒回転数は12である。 さらに、反応を1,4‐付加ー脱離過程を含む芳香属求核置換反応の触媒的不斉反応に展開した。脱離基として1‐位にフッ素を持つナフタレンイミンを基質とし、1‐ナフチルリチウムを反応させるとキラルジエ-テル5mo1存在下反応は触媒的に進行し80%ee以上のビナフチルが得られることが分った。触媒回転数は18である。 以上全く新規な不斉触媒反応を実現できた。
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