研究概要 |
本研究は、金属半導体界面における原子配置まで取り入れた精密な電子構造を第一原理から非経験的に計算し、界面の電子物性を明らかにしようとするものである。具体的には局所電子密度近似法の枠内で、LMTOーASA法を用いて、NiSi_2やCoSi_2の金属シリサイドとSiの界面だけでなく、YSi_2とSiの界面やCaF_2のような絶縁体との界面につていも、ス-パ-セルの方法で電子構造の計算を行なった。 (1)実験的にはNiSi_2/Si(111)界面のNi原子は7配位構造をとり,AタイプとBタイプが実現でき、ショットキ-障壁(pタイプ:E_Fー価電子帯の上端)の実験値は7A構造で0.47eV、7B構造で0.33eVである。局所密度近似による計算値は、7A構造が0.34eV、7B構造が0.19eVで、障壁の値そのものは実験値より小さくなっているがAタイプとBタイプの違いはよく一致する。 (2)CoSi_2/Si(111)では、Hamannが全エネルギ-の計算に基づいて提案した8配位構造が最も確からしい。ショットキ-障壁の高さを計算すると7A、7B構造で0.29、0.07ev、8A、8B構造で0.37,0.25eV、T4構造を仮定すると0.49eVであった。CoSi_2/Si(111)界面のショットキ-障壁の実験値は0.4〜0.5eVであるから、NiSi_2と同様、局所密度近似のために0.1〜0.15eV小さい値になっていると考えられる。YSi_2/Si界面のショットキ-障壁の計算値は0.56eV、実験値は0.73eVであるからこの場合も同様である。 (3)CaF_2/Si(111)では、作製時には界面準位には界面準位によってフェルミ準位がピニングされるが、アニ-ルするとフェルミ準位ピニングが解除される。このような事情も計算によって非常に良く説明されることが分かった。
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