研究課題/領域番号 |
03219105
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
山本 直樹 東京医科歯科大学, 医学部, 教授 (00094053)
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研究分担者 |
星野 洪郎 群馬大学, 医学部, 教授 (00107434)
原田 信志 熊本大学, 医学部, 教授 (60173085)
速水 正憲 京都大学, ウィルス研究所, 教授 (40072946)
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キーワード | HIV / エイズ / 細菌毒素 / SIV / 動物モデル / V3領域 / 中和 / 脳病変 |
研究概要 |
本研究では、HIV感染にかかわる諸問題を主としてウィルス学的手法を用いて研究した。とくに、エイズの発症機序の解明と治療および予防法の確立に役立てることを目的とし、以下の結果を得た:1)百日咳毒素は比較的高い濃度で種々の細胞に対し、HIV感染を促進した。一方、ごく低濃度において、HIVの潜状感染系であるU1細胞からの薬物によるウィルス誘発を抑制した。この系ではG蛋白が介在している可能性が強く示唆された。また、コレラ毒素はU1の系でHIVの誘発を起こすこと、その際サイクリックAMPの関与の可能性が示された。2)SIVmac低継代株のカニクイザル接種実験を行った。その結果、ヒトのエイズとほぼ同様なものを起こすことができた。しかし、米国で分離され、発症させることができると報告されているSIVmacを接種したが、感染の成立はあったものの発症には至らなかった。我が国でもエイズの動物モデルが確立したので、今後、ワクチン、治療薬の治験などに有用である。3)3種のプラッククロ-ンHIVを0.5βモノクロナル抗体存在下で培養すると、それまで完全に抑えられていたHIVによるCPEが観察された。この中和抗体から逃避したウィルスには、0.5βの反応部位であるgp120遺伝子部分のV3に一つか二つの変異を認めた。このことから、抗体反応部位の遺伝子に点突然変異が発生し、その結果、抗原性が変わり中和反応から逃避したと考えられた。このことは、エイズの発症を考える時、重要と思われた。4)ヒトの脳にHIVに感受性の高い細胞や感染性の高いウィルスが存在するかを調べた。その結果、ヒトの脳には、今まで知られていないCD4陽性の線維芽細胞があり、HIVに感染することを示した。この細胞に感染性を示すHIVはenv遺伝子のV3領域に一致して点突変異がみられた。これらのことは、HIVによる脳病変を考える時に重要と思われた。
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