HIV調節遺伝子nef(3'orf)はHIV遺伝子3'末端LTRと一部が重複した位置に存在する遺伝子で、レンチウイルスのHIV、SIVに特異的に見られる。 nef遺伝子産物NEF蛋白は25、27kdの分子量を持ち、前者はミリスチン化による細胞膜後者は細胞質内に局在する。免疫系への影響として、nef遺伝子の発現により、CD4マ-カ-の減少が報告されているが、その意義は明らかではない。そこで、nef蛋白が免疫不全の一要因としてT細胞に作用するという仮説を立て、昨年以来大腸菌発現ベクタ-によりnef遺伝子の発現と精製を行なって来た。さらに、精製標品の健康人末梢血リンパ球への添加によりT4/T8比の減少を観察した。 そこで、今年度は、この変化が細胞増殖能の変化によるか否かを検討する為、末梢及び大腸リンパ由来のT細胞株にnef蛋白を添加した。増殖能においてCD8細胞株では促進、一方CD4細胞株では抑制の傾向が観察された。このことから、HIV感染によりnef蛋白が血中に遊離すると、感染宿主に影響を及ぼす可能性が示唆された。 今後、nef蛋白の変異体を発現、精製しnef蛋白の生物活性部位を検討すると共に、nef蛋白がHIV感染にどの様な影響を及ぼすのかを追及する計画である。
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