HIVのエンハンサ-は10bpの反復配列を2つ含み、免疫グロブリンκ遺伝子エンハンサ-と相同性を有し、NFーκB配列と呼ばれている。私達はこのエンハンサ-領域に結合する蛋白質を精製すると共に、エンハンサ-結合蛋白質HIVーEP1のcDNAをクロ-ニングし、さらに2つの関連遺伝子HIVーEP2、3のcDNAクロ-ニングを行なった。これらの3つの蛋白質はいずれも200kd以上の大きなもので、DNA結合ドメインとしてメタルフィンガ-構造を有する。これらの発現はPHA、TPA処理により著しく上昇する。一方最近、他のグル-プによりHIVエンハンサ-に結合する蛋白質NFーκBのcDNAがクロ-ニングされNFーκBのDNA結合ドメインはがん遺伝子産物relとホモロジ-を有することが示された。NFーκBはTPA処理により核内への移行が促進される。したがってHIエンハンサ-にはHIVーEPとNFーκBの2つの異なる因子が結合し、TPAにより活性化されるメカニズムも異なっている。これらの因子のin vivoでの役割が今後の課題である。 また私達はHIVエンハンサ-の80bp上流に結合し、転写を促進する分子量38kdの蛋白質HIVーTF1を精製した。HIVーTF1の結合配列は転写因子USFの結合配列と類似しており、HIVーTF1はUSF関連遺伝子産物と考えられる。HIVーTF1はHIVエンハンサ-結合蛋白質のエンハンサ-領域への結合を促進することにより転写を促進する。HIVーTF1のDNへの結合はリン酸化による修飾が必須であることが示され、HIVプロウイルスの発現誘導と転写因子のリン酸化による活性化との関連が今後の興味ある課題である。
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