本研究は、海産の巨大緑藻イワヅタ(Caulerpa)の原形質流動における微小管の滑り分子機構を明らかにすることを目的とする。イワヅタの細胞内には100本前後の微小管の巨大な束が多数存在し、各微小管の間、および微小管と細胞小器官の間には、23nmの間隔で周期的に並ぶクロスブリッヂが観察される。このクロスブリッヂにダイニン様蛋白質が含まれていることを示唆する結果を本研究者ら得ている。更にイワヅタの粗抽出液中に、ウニ精子ダイニン重鎖領域とSDSーPAGEで移動度を同じにするペプチドを検出することができた。ウニ精子21Sダイニンに対する抗体を作製し、ブロッティングによる高分子領域バンドの同定を行ったところ、ウニ精子ダイニン重鎖より少し小さい分子量をもつペプチドがクロスリアクトすることがわかった。この抗体を用いて、間接蛍光抗体法によりダイニンの細胞内局在を明らかにした。またダイニン様蛋白質の抽出・精製を行っている。一方、イワヅタの細胞モデル系を用いて、イワヅタの流動において、細胞小器官と微小管の間の滑りのみでなく微小管同士の滑りが“おんぶ効果"として働いているか否かを明らかにするために、in vitroに取り出したイワヅタの微小管束を用いて検討中である。
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