筋収縮の本質はアクチン、ミオシンそしてATPの相互作用によるものである。我々はその分子機構を明らかにする為に、以下の実験を行った。まずGーアクチンを二価性化学修飾試薬(mーマレイミドベンゾイル)ーNーヒドロキシサクシニミド エステルでマレイミドベンゾイル化と、重合性を失ったアクチン(MBSーGーアクチン)を得ることができる。このMBSーGーアクチンを用いてミオシン(Sー1)との相互作用を調べた。次にアクチン分子内に消化酵素で切断を入れたときにミオシンとの相互作用にどのような影響を与えるかを調べた。 <MBSーGーアクチンを用いた実験>___ー Sー1MBSーGーアクチン複合体のラマンスペクトル解析により、複合体形成時にはアクチン側の構造には大きな変化は観測されなかったが、Sー1側においてそのトリプトファンの環境変化、そしてβ構造のくずれが観測された。一方複合体の生化学的研究により、MBSーGーアクチンはSー1 ATPaseを活性化しないが、架橋試薬でMBSーGーアクチンとSー1を化学架橋するとその活性能力が回復することが示された。また複合体のトリプシン消化、トリプシン消化されたSー1を用いた化学架橋の研究によりMBSーGーアクチンとSー1の結合様式はFーアクチン中のアクチンモノマ-とSー1とのそれと異なっていることが明らかになった。 <切断アクチンの重合と滑り運動>___ー Gーアクチンをプロテナ-ゼKにより限定分解すると、Metー47、Glyー48の間で切断され、C端側35kDaポリペプチド鎖を生じる。この切断アクチンは塩添加のみでは重合しないが、ファロイジン存在下でゆっくり重合しFーアクチン線維を形成することがわかった。しかしこのアクチンのSー1 ATPase活性化能力、またHMM上を滑る速度は非常に抑えられ、上記の切断がアクチンの機能に重要な働きをしていることが示された。
|