我々はすでに、パッチクランプ電流測定法により、ブラジキニン(BK)が、細胞内セカンドメッセンジャ-を使ってチャンネル活動を制御していることを証明した。40pSの大きさを持つCa^<2+>依存性K^+チャンネルが細胞内に注入したイノシト-ルリン酸(IP_3)に反応することを確かめた。また、IP_3が、伝達物質をトリガ-するか否かについて検討した。アセチ-ルコリンを、伝達物質とするニュ-ロブラスト-マ由来NG108ー15細胞を培養し、横紋筋と重層培養を行った。それぞれの細胞から膜電位を記録した。NG108ー15細胞にIP_3を注入し、筋細胞でシナプス電位の増加を観察した。一方、Furaー2を用いた、細胞内Ca動態を、測定し受容体依存性ファシリテ-ションにIP_3依存的Ca^<2+>が関与することを実証した。 そこで今年度は、(1)膜電位依存性Ca電流がBK刺激により減少すること。 (2)フォルボ-ルエステル刺激時には細胞内Ca濃度の上昇がみられず、また、膜電位依存性Ca電流も大きくならないことを確認した。この本年度の2点の結果と過去2年間の成果を考察すると、ブラジキニン刺激により生じるイノシト-ル三リン酸が細胞内Ca遊離を誘発し、このCaが細胞内のアセチ-ルコリン遊離機構を作動し、アセチ-ルコリンを遊離することがわかった。それには細胞外からのCa流入を必要としない点で、従来から言われているトランスミッタ-遊離のCa仮説とは少し異なることが判明した。そこでこのメカニズムに、イノシト-ルリン酸依存性Ca仮説と名づけることを提唱した。
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