1.シナプス前終末のカルシウムチャネルの多様性 鶏胚毛様体神経節に存在する杯状巨大シナプス前終末に対し、パッチ電極法を適用することにより、カルシウム電流を記録した。動眼神経の断端にロ-ダミン標識デキストランを投与することにより、順行性にシナプス前終末を同定した。シナプス後細胞から同時記録を行うことにより、シナプス前終末のカルシウム電流にともない、シナプス後細胞からシナプス電流を記録した。このことから、正しくシナプス前終末から記録されていることを確認した。Na電流、K電流抑制下に、Ba電流を測定することにより、シナプス前終末のカルシウムチャネルの多様性を検討した。シナプス前終末に存在する高閾値型カルシウムチャネルは、ジヒドロピリジン誘導体に感受性を示さなかった。また、その90%以上がωーコノトキシンにより阻害された。このことから、N型カルシウムチャネルがシナプス前終末の主要なカルシウムチャネルであり、L型カルシウムチャネルは、ほとんど存在しないことが明らかになった。また、ωーコノトキシンおよびジヒドロピリジン誘導体に抵抗性を示すBa電流は、膜電位感受性においてN型カルシウムチャネルと異なる性質を示した。以上により、シナプス前終末には、2種類のカルシウムチャネルサブタイプが共存していることが明らかになった。 2.伝達物質放出に連関するカルシウムチャネルサブタイプの同定 ωーコノトキシンによりシナプス伝達が強く抑制されることから、N型カルシウムチャネルが、伝達物質の放出と連関している活性帯のカルシウムチャネルであることが示唆される。しかし、僅かではあるが、ωーコノトキシン抵抗性のシナプス伝達が認められることから、ωーコノトキシン抵抗性のカルシウムチャネルも伝達物質の放出に連関していると考えられる。
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