研究概要 |
平成3年度は後氷期の気候変遷および小間氷期・小氷期の気候復元およびその影響、清朝中・後期における准河流域の洪水災害の地域性と居住環境との関係、日本を中心とした地域の歴史天候デ-タベ-スの作成チベット周辺地域の気候変遷とその影響の研究をおこなった。以下は主な成果で、項目別に記述する。 (1)東アジア〜東南アジアにおける後氷期の気候変遷、特に18,000〜20,000年B.P.は全体に低温で乾燥していた。例外的にパミ-ル高原からヒマラヤ南縁を経て中国雲南・西南日本は湿潤であった。次いで次第に暖かくなり、7,500年B.P.ごろには現在と同じか少し温暖になった。夏の季節風も強くなった。 歴史時代における中国の人口変化をみると、北部の乾燥地域で8世紀ごろ人口が他の地域に比較して相対的に多かった。これは、この時代には温暖で雨がやや多かったためと考えられる。また、寒冷と干ばつ、降砂回数は、北部の乾燥地域の人口に反映している。 清朝の中・後期の水害頻度は、1855年まで黄河が准河の下流に流入していたのでその影響が大きい。1855年以降、黄河は北流し、准河流域の水害頻度はこの流域内だけに起因する水害の状況を示す。1855年以前は30年余りの周期があった。以降の約20年間は乾燥化のため水害が減少した。 歴史時代のチベットと雲南の気候変動は、特に6〜7世紀の好気候の時期はチベットの成立と領土の拡大、雲南の南昭国の成立などと関連していると考えられる。 古日記・古記録の天気記録をデ-タベ-ス化し、日本における全国的な乾湿を復元し、異常な時代が認められることを明らかにした。
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