研究概要 |
(1)デ-タベ-スの構築 平成3年度は主として日本人および東アジア・太平洋諸民族の頭骨計測デ-タを収集し,デ-タベ-スの構築を行った。本年度中に入力した点数は日本人67集団,東アジア・太平洋民族83集団である(入力済み合計646集団)。 (2)地域性の分析 上記のデ-タベ-スを利用し,日本人および太平洋民族の地域性と類縁性について予備的分析を行った。 分析の対象とした集団は時代別・地域分のわけた日本人10集団,東アジア民族8集団,太平洋民族10集団である。 分析法は,まず頭骨の主要計測値9種に基づいて類以係数(Q相関係数)行列を計算し,これを距離行列に変換したうえでクラスタ-分析および多次元尺度法による2次元展開を行った。 上記の集団は全体として3群に別れ,それぞれ北アジア,南アジアおよび太平洋の地域別に分類される。日本人では縄文人,東日本弥生人,アイヌおよび沖縄の集団が南アジア群に属し,西日本弥生人と現代日本人の大部分が北アジア群に属する。 特異な傾向を示すのはフィリピンのネグリトおよびボルネオのダヤ-クで,これは3地域群のほぼ中間に位置する。この理由は,おそらくこれら2集団がアジア・太平洋民族の共通の祖先型を維持しているためと思われるが,それを檢証するためにはさらに詳しい地理的変異を分析する必要がある。 本年度はデ-タベ-ス構築の作業を継続するとともに,地域性の詳細な分析を行う予定である。
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