研究概要 |
非経験的分子軸道法を用い、Li,Be,Na,Mg,Al原子ならびにそれらの1価イオン及びBe^<2+>とMg^<2+>イオンの水和構造について、水分子数を1から6まで変化させ系統的に考察した。その結界、1、Li^+,Be^<2+>,Na^+,Mg^<2+>では金属イオンと水分子の酸素原子とが直接結合した構造が安定である。2、これらの原子の水和では、金属原子と酸素とが結合した構造のほかに、第2層の水分子を持つ構造や水クラスタ-に金属原子が結合した構造が安定に存在する。3、金属原子の安定水和構造は、水和数が4以下の時には原子に依って異なる。Liは、水和数が3以下ではLiと水分子の酸素とが直接結合する構造を取り、水和数が4になると4つ目の水分子は第2層になる。Naは水和数が3以下ではLiと同様だが、水和数が4になると4つの水が等価な水クラスタ-にNaが結合した構造が安定である。BeとMg原子は水和数が3でも水同士の水素結合による安定化の大きい構造が安定で、水和数が4の構造はBeはLiに、MgはNaに似ている。4、水和数が6になるとLi、Be、Na、Mgのいずれも6個の水が直接金属原子と結合する構造よりも、3個の水と金属原子が結合し、その外側に更に3個の水が結合する構造の方が安定である。5、Be^+、Mg^+イオンの水和構造はこれらの原子や、2価のイオンの水和構造よりもむしろLi原子の水和構造に類似している。6、水和金属原子のイオン価ポテンシャルを計算すると、いずれの金属原子でも水和数が0から4の間はイオン化ポテンシャルが水和数に応じて変化するが、水和数が4の時のイオン化ポテンシャルと水和数が6の時のイオン化ポテンシャルはほぼ等しく、特にNaは実験と良く一致する。ことなどがわかった。これらの結果は、金属原子と水分子の相互作用は水分子数が4以下の場合とそれ以上とでかなり異なること、水分子との相互作用の弱い原子の水和構造では、水同士の相互作用が構造を決める大きな要因であることを示している。
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