研究概要 |
1.単座配位のdmbpy(=3,3'ージメチルー2,2'ービピリジン)と水分子とが配位した六配位反応中間体、の中の配位水分子が単座配位子Lと置き換わる熱置換反応速度は、この中間体のモデル物質とみなせる[Ru(bpy)_2(py)(OH_2)]^<2+>(py=ピリジン)中の水分子とLとの置換反応速度に比べて2ー3桁大きいことがわかった。これは中間体で反応の活性化エンタルピ-が小さくなる為であり、単座配位dmbpyの立体障害効果によるRu(II)と水分子との配位結合の歪が原因と考えられる。 2.この中間体の光配位子置換反応性は第六配位座を占める単座配位子Lの種類によって大きく異なり、例えばL=SCN^-では単座のdmbpy配位子が光反応で取れるが、L=CI^-では、CI^-が取れることがわかった。 3.[Ru(bpy)_2(dmbpy)]^<2+>の閃光光分解の実験の結果、光照射の30μ秒後に生じている中間体は既に水分子が配位した六配位中間体であることがわかった。 4.高速液体クロマトグラフィ-により第六配位座に水分子が配位した中間体、アセトニトリルが配位した中間体を分離することができた。後者の中間体の寿命は室温で数十分と大変安定であった。又、生成した中間体溶液にNaSCNを添加することによりSCN^-が配位した中間体の単離に成功した。 5.中間体の構造を検討する為、錯体溶液のレ-ザ-光照射前、中、後の ^1H nmr測定(100MHz)を行ったが測定感度が不十分で中間体のシグナルは検出できなかった。 6.アスコルビン酸イオン誘起の光配位子置換反応における反応中間体については未だ同定に至っていない。
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