1.高温連続測定による新しい古地球磁場強度実験法が、特注の熱消磁装置と既設の超伝導磁力計を組み合わせることで可能となった。この実験法を浅間火山の火砕流に適用したところ良い結果が得られ、古地球磁場強度が非常に能率的に求まることが世界で初めて実証された。しかしこの方法は同時に、岩石磁気の変化が短時間に進行してしまい、部分熱残留磁化の加法則も厳密には成立しないことも明かにした。ハワイの現代の溶岩からは、自然残留磁化と熱残留磁化の比がある温度範囲についてのみ異なるとこが判明した。このことは非常に重要で、例えば月や隕石の磁化は鉄やニッケルの相変化がある温度で発生するため古地球磁場強度の実験が非常に困難であった。しかし高温連続の方法を用い、相変化の発生する温度を避けることで月や隕石の磁化も問題なく扱えることとなる。また米国カリフォルニア大での短期海外研修中にも、同種の共同研究を行ない同様の成果を得た。 2.過去に発表された古地球磁場強度について、過去1万年間を除く全地質時代についてデ-タベ-スを作成した。約千個のデ-タは単に強度値だけでなく実験法や試料数等の、デ-タの評価に必須のパラメ-タも含む。このデ-タベ-スから特代毎に古地球磁場強度の性質を解析した。1)過去1千万年には古地球磁場強度はガウス分布をなすが、全地質時代については異なること、2)中生代や古生代には地磁気の小さい時期あったようだが、デ-タ量な分布が十分でなく決定的でないこ。、3)先カンブリア時代については全くデ-タ量が少ないものの、現代と同じ程度の大きさの地磁気ですでに存在していたこと、等が明らかになった。また磁場強度と地磁気極緯度との関係を解析することで、1)過去1千万年では地磁気強度は双極子型であり、2)双極子軸が自転軸から傾くと地磁気強度が減少すること、の重要な結論が得られた。
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