本研究はカルベンとケイ素化合物との相互作用で発生が予期されるケイ素逆イリド中間体の介在を分光学的に検出、キャラクタリゼ-ションすると共に、生成物分析によりこのようなイリドの特性を解明することを目的とした。 本年度は先ず一般的なイリドの発生法の検討と、分光学的特性、反応の特性の解明を行った。その結果イリドの発生法としては分子内の近接位にヘテロ原子置換基を持つジアゾ化合物を光又は熱分解する方法が優れておりこのような手法によって、カルボニルイリド、オキソニウムイリド、アンモニウムイリド、スルホニウムイリド等を分子内的に発生できることを示した。次に、イリド前駆体を77K、2ーメチルTHFマトリックス中光分解し、分光学的に追跡したところ、一般にこれらのイリドが可視領域に強い吸収を持つことを明らかにした。しかし、室温閃光々分解法によるイリド中間体の検出は、少なくともマイクロ秒時間分解領域では不可能であり、これ等イリドの寿命はナノ秒領域にあることを示した。一方、これらイリドの反応は発生条件や構造によって著しく変化するが、一般に室温光分解条件下ではStevens転位による生成物を与え、高温気相熱分解条件下ではイリドから発生するoーキノジメタン等の中間体からの生成物が主であった。 このような研究結果をもとに、これまで殆ど研究例のないケイ素逆イリド中間体の発生を検討した。前駆体として分子内にシリル基を持つジアゾ化合物を合成し、その光熱分解を行ったところ、生成物分析からは一応ケイ素イリドの介在を示唆する結果を得た。今後さらに分光学的検出を行うべく研究を進めている。
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