インジゴ単位を主鎖中に含むいわゆるインジゴポリマ-の一部が強磁性的挙動を示すことを見いだしたが、本年度は、特にこのポリマ-およびそのモデル化合物の構造、スピン状態を検討した。 まず、強磁性的挙動を示すポリマ-成分のESRスペクトルを検討したところ、3300G付近の常磁性吸収以外に、低磁場領域にも高スピン状態の存在を示すブロ-ドな吸収を認めた。またこのポリマ-の非磁性部のESRは、g=2付近の吸収以外にg=4付近にS=1、△m=±2に対応するラジカルペア-の存在を示す弱い吸収がみられた。このg=4の吸収は、キユリ-則から予想されるよりも低温域で吸収強度が強くなった。これより、交換相互作用因子Jは正の値となり、基底状態で三重項が安定に存在することが明らかになった。 さらに、インジゴポリマ-のモデル化合物として、インジゴ、チオインジゴを合成し、構造などについて比較検討した。その結果、両インジゴ共にESRの3300G付近のみに吸収をもつ常磁性物質であり、インジゴの場合、g=2.0037、△Hmsl=約7Gのブロ-ドな1本線の吸収を示した。パルスESR法によって電子のスピンエコ-をさらに詳しく検討したところ、横緩和時間T_2=775nsが求まった。これらのことから、インジゴ中の不対電子は、主にキャプトデイティブ置換炭素上にあると推定される。一方、チオインジゴでは、g=2.0036、T_2=1.6μsとなり、不対電子が存在する核はインジゴと変わらないが、T_2が2倍となった。これは、インジゴでは水素結合によって分子間スピンースピン相互作用が容易になっているものと推定される。最近、インジゴ誘導体が、中心のCーC結合のねじれによって、室温で安定に三重項状態で存在することが知られている。これらのことから、インジゴポリマ-は棒状構造のひずみによって分子がねじれ、高スピン状態になっていると考えられる。
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