新しい触媒反応の開発を目本とし、2位にアルケニル基を有するオキシランと低原子価パラジウムーホスフィン錯体を反応させ、アルコキシ基が分子内でパラジウムに配位したπーアリルパラジウム錯体を形成させ、これら錯体の反応性を調べ、以下の成果を得た。 1.ギ酸によるアルケニルオキシランの選択的還元反応による光学活性アルコ-ルの合成。アルケニルオキシランとパラジウム触媒を反応させ、生成したπーアリルパラジウムアルコキシド錯体にギ酸を付加させることによりギ酸πーアリルパラジウム錯体に変換し、ついでパラジウム上での脱炭酸反応によりπーアリルパラジウムヒドリド錯体を形成させ、さらにこのヒドリドを分子内で位置及び立体選択的にエステルのγ位で反応させることにより、光学活性なアルコ-ル体を合成する方法を開発した。この反応は温和な条件下で触媒的に進行する。この反応を利用した光学活性昆虫フェロモンセリコルニンやアルカロイド235Bの立体選択的合成にも成果を得た。 2.ケルケニルオキシランと一酸化炭素の新しい反応。アルケニルオキシランとパラジウム触媒で形成されるπーアリルパラジウムのアルコキシドに一酸化炭素を反応させ、カルボニル化反応を行い5ーヒドロキシー3ーアルケン酸エステルを合成する方法を見出した。また電子不足のオレフィンを有するアルケニルオキシランからは、これまでアリル型化合物の反応では知られていなかった脱酸素反応及び還元反応が進行することをつきとめた。 今後、アルケニルアジリジンやアルケニルアゼチジンの反応についても触明する予定である。
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