本研究では、生物を自律分散システムの手本と考え、従来から研究を行ってきた生物機能を持つモデリング要素「モデロン」をサブシステムとして利用することにより、自律分散システムを構成する。自律分散システムは、中央統括部を持たないシステムであるから、その構成要素であるモデロンには、まず、自発性が備わっていなければならない。そのために、モデロンはワ-キングスペ-ス(WS)と呼ばれる環境を持ち、そのWSに現れるデ-タ、情報、メッセ-ジなどを自分で監視し、その内容に応じて自発的に処理を進める。次に、自律分散システムがある目的を達成するためには、各モデロンが単に自発的に処理を進めるだけでなく、他のモデロンと協調的に働かなくてはならない。そのための一つの方法として、要求駆動の方式を取り入れた。すなわち、モデロンはWSにある要求を発見すると、その要求に答えられるかどうかを判断し、もし答えられるならば処理を開始する。そのときに、自分ではわからないことがあれば、それを新たな要求としてWSに置き、その答を待つことにより他との協調を図る。 このようなモデロンを利用した一つの例として、自律分散的な生産システムを構成することを考えた。すなわち、工場の3つの構成要素(作業機械、搬送システム、倉庫)をモデロンとして定義し、それら全てが自律的に移動可能であるとすることにより、多品種少量生産に対応できるフレキシブル生産システムを提案した。 また、より高度な自律分散システムを構成するためには、その構成要素(モデロン)に要求される性質として、上記の自発性、協調性の他に、置かれた環境(他のモデロンやWSの状態)に順応して自己を改新していく機能、すなわち、進化機能が重要となると考えられる。本年度はその基礎研究を行ったが、さらに検討が必要である。
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