研究課題
渦鞭毛藻のGambierdiscus toxicusはシガトキシン類とマイトトキシンの2種の毒を生産する。前者はNaチャンネル活性化と抗カビ作用を示し、後者はCaイオンの細胞内流入と溶血性を示すが、抗カビ作用は有しない。何れの作用も極めて強力であり、チャンネルまたは特異的受容体を認識すると推定される。そこでG.toxicusの2株(GII株、RII株)についてマウス毒性試験、Aspergillus nigerを検定菌に用いた抗カビ性試験、溶血性試験により活性物質の単離・構造決定を行った。まず、GII株では培養後期の培地中に強い抗カビ活性が検出された。精製の結果4成分を得てgambieric acid A、B、C、D(GAA、GAB、GAC、GAD)と命名した。培地中にGACとGADが多く、それぞれGAAおよびGABの3‐メチルグルタ-ル酸のヘミエステルであった。マウス毒性は弱く、藻体中の含量は低かった。GAAはC_<59>H_<92>O_<16>の分子式を有する新奇ポリエ-テルであり、GABは12‐メチルGABと判明した。構造の新奇性に加えて、amphotericin Bの2000に達する強い抗カビ活性が注目された。RIIの抗カビ活性物質産生能は弱く、代わって強いマウス毒性が藻体に認められた。それぞれ単離の結果RGT1、CTX3C、CTX4Aと仮称した3種の毒を得た。RGT1はC_<43>H_<64>O_<11>の分子式を有する新奇骨格のポリエ-テル化合物であった。CTX3CとCTX4Aはシガトキシンの類縁体であることが判明した。培養藻体からこの2成分が得られたことによってG.toxicusがシガテラの真の起源であることが立証された。また、本生物の生産物の多様性が明らかにされた。なお、マイトトキシンについては部分構造を明かにしつつある。
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