1.NCSクロモフォアの第二世代10員環モデルとして、チオアセテ-トやアルコ-ル、およびナフトエ-ト側鎖を持つジエンジイノン化合物を合成した。期待どうり、チオアセテ-トやアルコ-ルは、顕著なDNA切断活性を示した。高脂溶性のナフトエ-ト単独の活性は弱かったが、NCSアポタンパク水溶液に懸濁させると活性が現われた。水溶性のアポタンパクがナフトエ-トを脂溶性ポケットに取り込んで、キャリヤ-として機能していると考えられる。更に面白いことには、期待したナフトエ-トのアポタンパク複合体は、弱い塩基配列特異性(5'‐GCTおよび5'‐GGT)を示したが、意外にもアルコ-ルが顕著なグアニン塩基特異的なDNA切断活性を示した。メチルチオグリコレ-トを添加しないと切断が起こらないので、アルキル化機構によらない可能性が高い。しかし、チオ-ルトリガ-によって生成したアレノン中間体にグアニンが付加しているかのうせいは否定出来ない。もしこのようなインタ-カレ-タ-や糖鎖部分を持たない単純なアルコ-ルが、DNA塩基を識別して切断出来るとすれば、画期的な発見である。弱い結合=水素結合と疎水的相互作用による分子認識が作用していることは間違いない。異性体の特異性やコンピュ-タ-・モデリングによって認識機構を検討中である。 2.10員環モデルとネトロプシンとのハイブリッドの合成にも成功した。ネトロプシンはDNA小溝バインダ-として知られている。このハイブリッドは、上記のモデル化合物よりずっと効率的にDNAを切断した。 3.重水中でDNA存在下、非存在下において、ネオカルジノスタチンクロモフォアをメチルチオグリコレ-トと処理し、生成物中の重水素取り込みをNMRによって調べた。2位と6位に生成したラジカルは、DNAからいずれも同程度水素を引き抜くことが分かった。
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