本研究では、超音速パルス分子ビ-ムの光励起による膜形成前駆物質の制御および前駆物質と基板表面の相互作用、薄膜形成初期過程、特にシリコンの原子層エピタキシ-のメカニズム解明を目指している。平成3年度は、前駆物質の選択生成を目的として、超音速フリ-ジェット中のSiH_4、Si_2H_6、およびSi_3H_8分子の分解過程を四重極分析計(QMS)を用いて調べ以下の結果を得た。 (1)QMS信号の時間分解測定を行なうことにより、超音速フリ-ジェット中のSiH_4、Si_2H_6、およびSi_3H_8分子の速度を決定した。 (2)ArFレ-ザ-(193nm)により超音速Si_2H_6およびSi_3H_8分子ビ-ムを励起し、QMSにより分解生成物の同定を行ない、主な生成物はSi^+であることを示した。 (3)SiH_4、Si_2H_6、およびSi_3H_8分子の電子衝撃による分解において、分解生成物の電子衝撃エネルギ-(V_e)依存性を見いだした。既ち、V_e=10VではSi^+が主な分解生成物であるが、V_e=14VではSiH_2^+SiH_3^+が生成されるようになり、特にSiH_4、Si_2H_6、Si_3H_8から最も多く得られる生成物はそれぞれSiH_2^+、SiH_3^+、Si^+となることが解かった。 (4)SiH_4、Si_2H_6、Si_3H_8の分子軌道にもとずき、これらの分子における選択励起の効果を検討した。励起エネルギ-〜10eVでは最高占有軌道にある電子の励起が支配的であるが、〜14eVではエネルギ-のより低い軌道にある電子の励起も可能となり、分子の分解機構が異なってくる。これを利用することにより、前駆物質の選択生成が可能となることを示した。
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