1.ZnSe、ZnS、CdSe、CdS、ZnSSe、ZnCdSe、ZnCdsの有機金属気相成長(MOVPE)の際にキセノンランプ光を照射した。基板表面の雰囲気ガスを差動排気して質量分析した結果、光照射時にアルキル亜鉛の分解が促進されることが判明した。また、アルキルカドミウムの分解は低温で行われているので、光照射によってもそれは促進されないことがわかった。この結果、表面での光化学反応素過程として、表面に化学吸着したアルキル亜鉛が光照射によってアルキル基を脱離させ、そこに生じた活性なZnボンドとアルキルカルコゲンとの反応によって膜が成長するというモデルを提案した。さらに、光照射効果がアルキル亜鉛の分解に対して選択的な効果を持つことを応用して、光のオン、オフにより組成の異なる多層構造を作製するという新しい組成制御の方法が可能となった。 2.GaAsのMOVPE成長においては、光触媒反応による大幅な成長速度の増加は見られなかった。このことから、IIIーV族半導体では本質的に光触媒反応のcriteriaが成立しないことも考えられたが、他の原料の選択によりそれが満たされることも考えられるので、この問題に関しては今後の研究が望まれる。 3.エビ層の結晶学的、光学的、電気的諸特性、それらと成長条件との関係を調べ、光照射により成長した膜の品質が優れていることが判明した。特に、GaAs基板に格子整合したZnSSeでは、X線ロッキングカ-ブの半値幅が40秒程度の良好な膜が得られ、この値は、不純物を大量に添加しても大きく劣化することはなかった。 4.光触媒反応による成長では、光により生成された過剰のキャリアによる強い非平衡状態が生じている。このような状態下での欠陥生成過程を理論的に解明した結果、補償欠陥が減少し、不純物添加に光照射が有効な役割を果たしうることが判明した。
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