研究概要 |
平成3年度の実験的研究により、γーFe3層、MgO4層からなる人工格子の作製に成功し、このγーFeが低温で強磁性,室温で超常磁性に近い特性を示すことをSQVID磁束計を用いて確認した。保磁力は5Kで400Oe程度であり、25Kでも100Oe程度あった。人工格子中のFeの絶対量は試料を酸に溶解し、その溶液を原子吸光分析製置で測定し、一原子当たりの磁化は1.4〜1.5μ_Bと求められた。この値はワイスのγーFeの強磁性相の予測値や最近求められたCu単結晶表面上のγーFe蒸着膜の値より小さい。またこの磁化は30kOeの強磁場を印加しても飽和しない傾向にある。この磁気モ-メントの低い理由としては、高分解能電子顕微鏡や+1電子回折の結果より,このγーFe微結晶(a=3.6AはまわりのMgO(a=4.21A)との格子の不整合のため、周辺部の格子定数が大きくなっており、このため周辺部が強磁性、中心部は常磁性または弱い反強磁性であり、全体の磁化として2μ_Bより小さい磁化が測定されたと解釈される。また、MgO/γーFe/MgOの多層膜(人工格子)の試料作製の他にも、Cu/γーFe/Cuの人工格子を作製しその構造と成長様式を反射高速電子顕微鏡と高分解能電子顕微鏡を用いて研究した。
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