研究概要 |
2相分離型状態図を構成する2元素からなる多層膜の熱的安定性を、オ-ジェ電子分光法(AES),走査型電子顕微鏡(SEM)観察,透過電子顕微鏡(TEM),X線マイクロアナリシス(EPMA)等により調べ,以下のような結果を得た。 1)Ag/Cu系については、空真蒸着法を利用し、石英ガラスウエハ-上に厚さが各々20nmの純Ag層および純Cu層を交互に積層させることにより、多層膜を得た。 2)CoーCu/CuーCo系については、スパッタ-法を利用し、石英ガラスウエハ-上に厚さが各々10nmのCoーrich層およびCuーrich層を交互に積層させ、多層膜を得た。 3)作製したままの状態では、いずれの多層膜も規則正しい周期構造をもっており、各層は微細な結晶粒からなっていた。Co/Cu合金多層膜のCoーrich層は約25at%Cu、Cuーrich層は約30at%Coの濃度であった。 4)Co/Cu合金多層膜をCoーCu2元状態図の2相領域で短時間加熱すると、層間の界面付近で構造変化が始まった。短時間加熱による界面近傍の濃度変化は、1次元の非線形拡散方程式に基づいたコンピュ-タシミュレ-ションによりうまく再現することができた。 5)Co/Cu合金多層膜を2相領域においてさらに加熱すると、周期構造は徐々に崩れていった。また加熱により各層の結晶粒サイズは大きくなった。 6)Ag/Cu多層膜も、状態図の2相領域内の加熱により、周期構造は徐々に崩れていった。加熱の後期段階では、表面側にはAgが、逆に石英基板側にはCuが多く存在していた。 7)両多層膜の表面には、加熱により多数の微小粒子が現れた。 8)現実に作製した多層膜は、必ずしも熱的に安定であるとは限らないことがより明かとなった。
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