1.市販品を精製して得たウマ心臓メトミオグロビンについて、30mg/mlの高濃度でも可逆的に変性が起こる条件を種々検討した結果、重水溶液中pH5.35前後で2MUreaを共存させることにより、且つ低温変性を利用することによってこれが可能であることがわかった。 2.上記条件下でのミオグロビンを0℃で一定時間低温変性状態に保った後、35℃に急速に昇温することにより誘起される天然構造の形成過程を温度ジャンププロトンNMRにより追跡した.その結果、ポリペプチド鎖全体がほぼ同時に協同的に巻き戻ることがわかった。その平均時定数は0℃に30分後保った場合210秒であった。この高次構造形成の速度は低温変性状態での保持時間に存在する。このことは低温変性に少なくとも二つの状態が存在することを示唆している。 3.ここで観測されたミオグロビンの高次構造の形成はヘムとの相互作用によりもたらされたものである。高次構造の完結に先立ってヘムとアポ蛋白質との間で何らかの会合中間体が形成され、いくつかの段階を経て最終的な構造が形成されるものと考えられるが、これまでのところこのような中間体のスペクトルを特定するには至らなかった。 4.以上の実験によって温度ジャンプNMRに適した実験系と実験条件を確立することができた。今後は高速温度ジャンプNMR検出器を用いて、速い過程で形成される多元的構造中間体の研究を行う予定である。
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