研究概要 |
生体内での酵素触媒反応や電子移動には、金属が極めて重要な役割を果しており、その機能ー構造相関に関する研究は、関連分野の研究の発展に不可欠である。そこで、生体内で最も重要な金属の一つである銅に注目し、単核銅蛋白質であるシュ-ドアズリン、アズリン、アミシアニン及び複核銅蛋白質であるアスコルビン酸酸化酵素、亜硝酸還元酵素の結晶構造解析を行い、銅が果す生体内機能の構造相関を、原子のレベルで明らかにすることを目的とする研究を行った。平成3年度の具体的研究成果は次のとおりである。1)Methylobacterium extorquens AM1のシュ-ドアズリン:シンクロトロン放射光を用いた回折実験を行い、異常分散効果を利用して銅原子の位置を決定した。これを手がかりに、構造が既知のAlcaligenes faecalis Sー6を初期構造モデルとする分子置換法を行い、構造を解析した。引き続き分子動力学法による精密化を行い、最終段階に入っている。2)Achromobacter xylosoxidans NCiB11015のアズリン:脱窒菌A xylosoxidans NCiB11015を破砕、硫安分画後、CMーsephadexカラムによってアズリンがチトクロ-ムC'や亜硝酸還元酵素等とともに分離される。これまでの研究で、硫安を沈澱剤とするハンギングドロップ蒸気拡散法で針状結晶が得られていたが、X線回折実験には太さが不十分であった。新しくマクロシ-ディング法による結晶育成を試みたところ,0.2ー0.3mmの太さのものが得られたので、シンクロトロン放射光を用いて回折強度を測定した。構造が既知のAlcaligenes deritriqicansを出発構造モデルとした分子置換法により構造を解析し、分子動力学法による精密化を行っているが、現在2.5A^^○分解能デ-タを用いてRが25.1%である。3)その他、A.xylosoxidans NCiB11015のチトクロ-ムC^^'の結晶化、Rhodospirillum rubrumのチトクロ-ムC'の精密化、Streptomyces caespitosusの中性プロテア-ゼの構造解析、構造解析ラボシステムの構築などを行った。
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