本研究では、最近接塩基対モデル(Nearest Neighbor Model)を基に、核酸構造に関与する相互作用として水素結合とスタツキングを考慮して、ワトソン・クリック型RNA塩基対の安定化エネルギ-△G°を実験的に決定した。さらに、ワトソン・クリック型RNA塩基対からなるオリゴヌクレオチド二重らせんの△G°及びエネルギ-・パラメ-タの値から、リボザイム(機能性及び触媒性RNA)の最安定化構造のエネルギ-を算出した。例として、テトラヒメナ・リボザイムの二次構造についての成果を報告する。テトラヒメナ・リボザイムにおいては、ステムの鎖長と安定性の関係について、鎖長が延びれば安定性が増加するという一般的傾向が認められたが、この鎖長と安定性の関係は必ずしも成功するとは限らなかった。例えば、このリボザイムのP9.1とP9.2のステムは両方とも7個の塩基対をもつが、その安定化エネルギ-は前者が後者よりも5.3Rcal mol^<-1>も大きく、安定性に大きな差がある。P9.1aとP9.2aのステムに至っては、鎖長と安定性の関係が逆転した。このように、ステムの安定性を検討する上で従来から考えられていた鎖長との関係のみならず、塩基配列との関係も重要であることが明らかとなった。また、ステム以外の部位については、P5CとP9.1aなどのステムで閉じられているヘアピン・ル-プにはUGCAの同じ配列があり、両ステムの融解に伴いこの配列の三次元的相互作用の可能性が生じる。さらにこのことは、リボザイムが最適な(反応において)高次構造をとることに関連しており、反応点以外にも重要な部位が本研究によって示唆された。
|