研究概要 |
本研究の目的は2つある。まず第1の目的は,物質表面の数ナノメ-タ程度からの構造情報を取り出すことのできるX線全反射法を使って,融点直下の固体表面での格子振動の大きさや,原子の平均的格子位置からのズレに関する定量的情報を決定することにより,固液界面における原子の構造を解明することである。このために,平成3年度は既設のゴニオメ-タを全反射専用装置に改造し,赤外線による表面加熱装置を用いてX線全反射測定用の加熱炉を設計,作製した。現在,この改造した装置を用いて測定を行うための準備中である。第2の目的は,原子レベルでの粒子表面の原子構造を解明し,焼結に伴う結晶粒子の粗大化による結晶粒成長の機構を解明することである。この目的のために,表面原子の割合が極端に大きいナノメ-タサイズの亜鉛フェライトの超微粒子を使い,X線による表面の原子構造の定量解析を行った。測定された一連の非常に広がった回析ピ-クを用いたピ-クブロ-ドニング解析の結果,これらの微粒子は歪をほとんど含まず,その平均粒径が約4nmであることが分かった。この結果から4nmの結晶粒子を仮定し,散乱強度を計算したが,測定された散乱強度バックグラウンドを全く説明できなかった。そこで,最も単純なモデルとして粒子表面から0.2nm程度の深さに存在する表面原子の状態が,内部のバルクの原子と異なっているという粒子の原子構造を仮定し散乱強度の計算を試みた。この結果,内部の原子は結晶構造を保持しているが,表面の原子がどちらかと言えばガラス的な原子構造をしていることが分かった。また,このモデルからFe及びZn原子の周りの環境構造を反映した散乱強度を見積もったが,これらは実際にFe及びZn原子のK吸収端でのX線異常散乱法により決定した散乱強度をとよい一致を示した。この結果,さらにこのモデルの妥当性が確認された。
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