従来行って来た研究で、GaCl_3/H_2とAsH_3/H_2を交互に供給することにより、200℃〜400℃と言う広い温度範囲でGaAsのALEが可能であるとの結果を得ていた。しかし、SPAの装置を手配する間に、CaCl_3/H_2とAsH_3/H_2を用いたALEをより詳細に検討した結果、場合によっては1サイクル当り1原子層以上の成長が起こっていることが判った。また91年秋の応用物理講演会でクロライドALEについての2つの相異なるSPAの測定結果が発表された。そこで本年度はSPA測定装置の立ち上げを少し延期し、ALEの膜厚測定法を改良して、GaCl_3/H_2とAsH_3/H_2を用いたALEの再検討を行った。 その結果、GaCl_3/H_2とAsH_3/H_2を交互に供給した場合、基板温度200℃〜250℃では約0.7ML/C、300℃〜450℃では成長温度の上昇と共に1サイクル当りの成長度が徐々に上昇し、300℃での約1ML/Cの成長から450℃での2ML/C弱の成長まで変化することが判った。また、この1サイクル当りの成長速度はキャリアガスが水素の場合もヘリウムの場合も違いがなかった。この事は塩化物法によるALE成長機構に、H_2キャリアガスによる塩化物の還元が関与していないことを意味している。なお、ラマン分光測定の結果、300℃以下の成長層は多結晶であることが判った。 以上の実験結果より、ALEの成長機構は、基板温度300℃以下ではGaCl_3がGaAs表面に物理吸着し、立体障害の為、0.7ML/C程度の堆積速度になる。炉の温度が上昇すると基板表面の一部がGaClで覆われ、その上にGaCl_3が配位結合によって吸着し、1サイクル当りの成長速度が1ML/C以上になる、ものと考えられる。
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