研究概要 |
YBa_2Cu_3O_x用CVD成長装置に波長780nmの半導体レ-ザ-とシリコン光検出器を組込み、基板に対して60度の角度で入射した光の反射光強度をモニタ-できるようにした。CVD原料のβジケトン金属錯体(Y,Ba,Cu)と酸素ガスはコンピュ-タ制御によりパルス供給を行なった。450℃に加熱した(100)MgO基板上に原料を交互供給してYBa_2Cu_3O_xの成長を行ないながら成長表面の光学反射率を測定したところ、原料供給に対応して光学反射率が著しく変化することを見出した。RHEED振動に似たふるまいである。GaAs系では表面からの反射光成分は小さいので、偏光を用いてバルクからの寄与を最小限にして変調測定を行なう必要がある。ところが、本研究の場合には目視で十分に反射率の変化が認められた。反射率は過渡変化のあと各金属や酸化物に特有の定常値を示した。過渡時間は金属の種類や基板温度により変化した。 どのような機構で表面吸着物質が大きな反射率変化をもたらすかは現在のところ分っていない。現在の成長条件では2次元成長ではなく3次元的な成長がおこっている。完全な一原子層ごとの成長ではないが、一パルスあたりの成長速度は0.3〜10nmである。反射光強度のスペクトルを調べて、表面吸着物質の化学構造を特定し併せて反射率変化の機構を解明する検討を行なっている。 光学反射測定はCVDにおける成長その場モニタ-法として有力であることが分った。表面の原子配列状態の監視だけでなく、結晶成長機構の解明にも新しい情報を提供することになろう。
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