2次元量子反強磁性体の新しいモデルとして、飾り付き正方格子上の競合する交換相互作用をもつS=1/2等方的ハイゼンベルグモデルを提出し、その基底状態を調べた。この系の古典近似の基底状態はパラメ-タの広い範囲で巨視的な縮重度をもち、量子系では新しい型の基底状態を示す可能性がある。本研究では、厳密対角化の方法によって基底状態を求め、その知見に基づいて無限系の基底状態の相図について考察した。 (1)スピン数24の系について、周期境界条件のもとで厳密対角化の方法を用いて基底状態を求めた。モデルに含まれる1箇のパラメ-タを変えていくと、4つの相が現われる。それぞれの相において、基底状態におけるスピン対相関関数を計算した。 (2)厳密対角化の結果とスピン波近似の結果を総合して、無限系のこのモデルには5つの相が現われると推測した。そのうち2つは、完全に分極した強磁性相と、ネ-ル秩序をもつフェリ相であり、良く知られた状態である。残りの3つの相が興味深いが、厳密対角化の方法で確定的な結論を得るのは困難である。 (3)競合する相互作用の比が小さいときに現われる相について、摂動論を展開した。1つの副格子上のスピンはネ-ル秩序を保持し、他の副格子上のスピンはそれらに垂直な面内でヘリカル構造をとる立体的なスピン構造を示す。 (4)今後、変分モンテカルロ法を適用することを計画している。その準備として、この方法を用いて磁場中の2次元量子反強磁性体を調べ、いくつかの知見を得ている。 以上の成果については、近いうちに雑誌論文で発表する予定である。
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