高圧下における氷の物性の研究は圧縮による水素結合の対称化に伴う相転移とそれに付随して起こるプロトン位置の秩序一無秩序転移、外感星の内部構造と磁場生成に関した超高圧下の氷の状態方程式(EOS)と絶縁体ー金属転移等、物性物理、感星物理的観点から興味深い。本研究課題において上記に関して問題点を指摘すると共に今後の研究の方向を示した。これまで得られた中間結果は本報告書に記した論文において発表したが、その概略を下記に示す。 (1)X線回折によるEOSのデ-タを解析してP〜40及び70GPaにおいて相転移があることを見い出し、氷の水素結合対称化転移に関する光学的測定とX線回折測定間の不一致が解消され得ることを示した。更に高圧側にicox^1(プロトン無秩序相)が出現することを予測した。この転移は従来信じられているより複雑である。(2)氷の対称水素結合相(iceX)はHrijbーHocjapbelの予測(立方晶)とは異なり正方晶の可能性が高いことを示した。(3)密度汎関数理論に基ずき超高圧下の氷のEOS及び電子状態を計算し、外惑星の氷の中間層に対して用いられている統計模型はよくないことを示した。また結果より外惑星内部の氷の中間層は温度効果を考慮しても電子伝導は十分小さいが、巨大惑星内部の氷の中間層は金属化していると予測される。(4)超高圧下の氷の結晶構造は従来の説とは異なり六方晶である可能性をを示すと共に遂次転移をする可能性を予測した。従来のイオン模型に基ずく、分子動力学あるいはmoclibied electron gas理論による結果は再検討する必要がある。以上より研究の方針は明確になったが、定量的にこれらの問題を解明する研究は現在進行中である。時間を要する問題もあるが、最終結果については後日適当な雑誌に発表することで報告の代りとしたい。
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