研究概要 |
温位,塩分,風応力の観測デ-タの年平均値に対して,流動場を診断的に求めた。従来の循環像や溶存酸素の分布などと矛盾しない流動場が得られた。水平には2度,鉛直には250m間隔で仮想的な標識粒子を投入し,粒子群が保存性物質を代表するとみなして,50年間にわたって各時刻での位置を数値的に求めた。 1.ロス海,アラスカ沖,カムチャッカ沖の3箇所で表層(1000m以浅)水が深層(3000m以深)へ沈降していた。アラスカ沖で沈降している表層水は,黒潮続流がアメリカ大陸に達した後で北上したものである。ロス海の時計回りの循環流によって運ばれて来た南極周極流起源の表層水が,ロス海の東西2箇所で沈降していた。 2.北太平洋(NP)海盆,南西太平洋(WP)海盆,南東太平洋(EP)海盆間の50年間での交換量について検討した。NP海盆の70.7%の水はもともとNP海盆の深層にあった海水であり,23.7%の海水がNP海盆の中層(1000〜3000m)から,4.0%が他の海盆の中層と深層からNP海盆の深層へ移動して来たものである。NP海盆の深層の1.6%は海洋全体の表層から沈降してきたものである。4.5%の表層水がEP海盆の深層へ移動していたが,これはロス海での沈降によって生じている。 3.NP海盆,WP海盆,EP海盆の深層水が,各海盆の中層以深に滞留する時間は,それぞれ898,89,67年であった。南極周極流による海水交換がかなり活発であることを示している。 4.四季の平均密度場を用いて,各季節の平均流動場を診断的に求めた。赤道海域では,大きく季節変化をしている。この流速場を用いた水塊移動については来年以降に検討する予定である。
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