研究概要 |
大脳新皮質からの下行投射は皮質の下部層(5,6層)の細胞から発し,このうち第6層の細胞は視床核に投射するのに対し,第5層からは主に中脳以下の構造に投射し,視床核への投射はその副側枝で行こなわれている.今回の研究の目的は視覚系視床核での終止部と皮質での起始部との関係を明確にすることにより,視床を介する皮質間の結合を解剖学的に解析することにある.上記の目的を達成するため,ネコの視覚系視床核に軸索輸送標識物質を注入し,皮質起始細胞の第5層と第6層の分布の違いを中心に検討した結果,以下の所見を得た.1)外側膝状体背側核:いずれの層への下行投射の起始細胞の分布は皮質求心線維の終止領野の第6層に限られている.2)枕核:最外側端の網膜投射受容部と視蓋前部投射受容部では皮質との結合様式が異なる.A.網膜投射受容部;17,18,19,21a,7野,PMLS等の皮質領域と結合しているが,このうち17,18,19野での起始細胞は第5層存在し,その他は第6層にある.さらに17野,PMLSとの結合は相互結合でなく,17野からは皮質からの下行線維を受け,PMLSには上行線維を出すのみである.B.視蓋前部投射受容部後部;19,21b,PMLS,VLS,7野,帯状回の第5層から,19,20a,20b,帯状回の第6層から皮質下行投射を受ける.19野での皮質起始細胞の分布は重合しているが,帯状回においては分離している.一方,前部は,7,19野の第5層から,7,21a,20a,帯状回の第6層からの下行線維を受けるが,7野の第5層の分布は第6層の分布に比して後部にあり,分離している.3)後外側核:A.外側部;第5層の分布は,17,18野に限局して見られ,第6層の分布は,19,21a,21b,VLSに存在する.B.中間部;第5層の分布は,19,PMLS,VLSに存在し,第6層の分布はPMLS,VLS,前シルヴィウス外溝に存在する.なお,同一皮質野での分布も第5層,6層での分布域が分離する.C.内側部;第5層の分布は,主にPLLSに集中し,第6層での分布は,前シルヴヰウス外溝,DLSに集中している.以上の結果,視覚視床核の単一の部位は外側膝状直体背側核を除き,視覚皮質野の異なった領域の第5,6層の二重支配を受け,第5層からの支配は第6層からの支配に比し中心領域から起こると結論できる.
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