研究概要 |
近年の生理・薬理学研究や分子生物学的研究の進歩によって、心筋興奮。伝導の機構やそれを担うと見なされる分子群の姿が次第に明らかになりつつあるが,その成果を有機的に結びつけ,致死性不整脈の基本的理解とその予知,発見等に役立ち得る分子ツ-ルと手段を確立し,それらを活用して心筋で機能する各種イオンチャンネル群の作動機構を分子構造との関連で明らかにしてゆくことが本研究の目的である。本年度は以下に述べる成果を得た。 1.Caチャンネル上のジヒドロピリジン結合部位の同定:心筋細胞中の同チャンネルの同定に先立ち,骨格筋細胞を用いて光アフィニテイラベル法によって詳しく解析した。ジヒドロピリジン骨格にカルベン前駆体であるフェニルジアジリン基を導入した新しい光アフィニテイプロ-ブ,ジアジピンDiazipine1を合成し,この試薬が光反応性,生成物の安定性共に既存のアジドピンより優れていることを確認した。1はウサギ骨格筋Caチャンネルのαlサブユニットを効率よく光ラベルした。このラベル標品をプロテア-ゼでペプチド断片とした後,予め調整したCaチャンネル上の特定の一次構造と特異的に反応する抗体数種を用いることによって,ラベル部位はリピ-トIIIのS5ーS6間のル-プ部とリピ-トIVのS6を含む部分に起っていることを初めて明らかにした。ジヒドロピリジンの作用様式から2個所のラベル部位がCaチャンネルのイオン透過孔の外口部を形成することも提案した。 2.心筋Naチャンネルのリン酸化と抗不整脈薬結合部位解析用の抗体の作製:同チャンネルのプロティンキナ-ゼAでリン酸化されると予測した部位と,抗不整脈薬リドカインの結合部位を上記1と同様の手法で解析するツ-ルとしての数種の抗体を作製した。これらを活用することによって対応する部位の同定と解析を進めることが次年度の課題である。
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