研究概要 |
本研究では染色体の分配過程を,Ca^<2+>というひとつの調節因子を通して研究を行い,特に出芽酵母を用いてCa2+依存性タンパク質修飾因子(CAL1)とカルモデュリン情報伝達系に注目して,その機能の解析を行った。まずcallはそもそもCa^<2+>依存性変異株として単離され,核分裂と芽の成長に欠損を持っていたが,遺伝子の構造解析,及び遺伝子産物の高発現による機能解析の結果などから,(i)CAL1はタンパク質のC末にゲラニルゲラニル基を転移する酵素(ゲラニルゲラニル:プロテイン転移酵素)の構造遺伝子であること,(ii)出芽過程に欠損を持つcdc43の対立遺伝子であること,の二つの点がわかった。このCAL1と相互作用する因子として低分子量GTP結合タンパク質をコ-ドするRHO1,RHO2を同定し,CAL1の機能を活性化することを示唆するデ-タが得られた。さらにCAL1/CDC43遺伝子内部に生じた独立に得られた7つのアレルの位置を塩基配列レベルで決定し,アレルによる表現型の違い,RHOとの相互作用形式の違いなどを説明する分子的基盤を確立した。一方カルモデュリン自身の機能については温度感受性突然変異株を使った解析から,この変異株はG2/M期で増殖を止め,微小管の集合中心であるSPBの機能不全になり,特にキネトコアや核膜との相互作用が異常になっていることが明らかになった。さらにカルモデュリンの変異とチュ-ブリンの変異の二重変異がシンセティック致死になったことから,初めてカルモデュリンとチュ-ブリンとの間に遺伝的な相互作用があることがわかった。つまりカルモデュリンはチュ-ブリンやSPBの機能を介して核分裂に重要な働きをしていると考えられる。
|