研究概要 |
土壌細菌の一種である毛根病菌Agrobacterium rhizogenesのRiプラスミドを薬用人参(オタネニンジンPanax ginseng)に導入して、薬用人参の毛状根培養系を確立した。この薬用人参毛状根はホルモン調節により得られた培養根と比べて、サポニンの高生産能を有し、さらにフェニルカルボン酸やジギトキシゲニンに対して優れた変換能を示すことが明らかにされた。 今回はジンセノサイドと同様のトリテルベノイド骨格を有し、重要な生薬、甘草の主成分であるグリチルリチンのアグリコンのグリチルレチン酸(GA)を投与して変換物の検索を行った。その結果、新規物質3種を含む6種の変換物が単離,構造決定された。主変換物として、Cー30位のカルボキシル基にグルコ-スを配糖化したエステル型配糖体のGAー1を約15%の変換率で単離した。GAー2はGAー1のグルコ-スの2位にさらにもう1分子のグリコ-スが結合した、即ち2糖類のソホロ-スが結合した化合物である。GAー3はGAー1のグルコ-スの6位にマロン酸が結合した化合物で新規の化合物である。GAー4はアグリコンGAのCー3位の水酸基にソホロ-スが結合したエ-テル型の配糖体である。さらにGAー5はGAー4のソホロ-スの末端グルコ-スの6位にマロン酸が結合した化合物でこれも新規物質である。そしてGAー6はGAのCー3位にソホロ-スが、Cー30位にグルコ-スが結合した化合物でこれも新規物質である。薬用人参毛状根によるGAのエステル型及びエ-テル型配糖体の生成比率に関しては、エステル型配糖体の生成率が高いことが認められた。ソホロ-スは薬用人参のサポニンの構成糖として広く存在しており、さらにマロニル誘導体も薬用人参の常成分中にマロニルジンセノサイドRb_1,Rh_2,Rc,Rdとして存在していることが知られており、これら得られた変換物の糖鎖構造には類似性が認められた。 現在、エ-テル型配糖体とエステル型配糖体について種々の条件で投与し、選択的な変換条件について検討中である。
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