研究概要 |
我々は既に,EGFRを認識するモノクロ-ナル抗体とhemetytinであるgeloninとの複合体を作製し,この複合体がEGFRを過剰発現している扁平上皮癌細胞に対して特異的に殺細胞効果を示すことをin vitroおよびin vvoで証明してきた。 本年度は,geloninとは作用機序の全く異なるhemolytic toxinと癌関連細胞膜蛋白を認識するモノクロ-ナル抗体との複合体による殺細胞効果を検討すると共にhemolytic toxinの構造についても検討したので報告する。hemolytic toxinは日本近海原産のイソギンチャクであるsea anemone Actina LよりGー50カラムとCMー52を用いて抽出し,電気泳動を行いゲルをクマシ-染色とコンカナバリンAに対する対応性で検討した結果、本物貭は20Kdaの糖蛋白貭である事が判明した。加水分解後にニンヒドリン法アミノ酸組成分析を行った所Glycine,Valine,Alanineの含有量の多いタンパク質で,一部の一次構造を解析した結果,Sialidaseやpyruvate kinaseとの相同性が高いことが明らかとなった。 遊離したhemolytic toxinは非特異的にいずれの細胞にも作用して細胞膜を融解し殺細胞効果を示したが,イムノグロブリンと結合するとその作用は消失した。しかし、SーS結合を開離すると再び殺細胞効果を示した。一方,CEA関連抗原を認識するモノクロ-ナル抗体と結合させるとエピト-プを有する大腸癌細胞株にのみ殺細胞効果を示した。さらに,モノクロ-ナル抗体が認識するエピト-プ量(細胞当り)とhemolytic toxinとの複合体による殺細胞効果との関連を検討すると,両者間には有意に正の相関関係が認められた。以上の成績はin vitroの成績であるが,今後ヌ-ドマウス移殖癌組織について検討を行いたい。
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