研究概要 |
1.DnaA蛋白は真正細菌で普遍的に染色体の複製及び遺伝子の発現を制御する重要な蛋白である。我々は、5細菌のDnaA蛋白のアミノ酸配列を比較することにより、Nー末端約60アミノ酸からなる中程度に配列が保存されているドメインI,続く、細菌毎に長さが異なり(40ー100アミノ酸)、配列に保存性が認められないドメインII、約230アミノ酸からなり、ATP結合配列を含む配列が高度に保存されているドメインIII、Cー末端約100アミノ酸からなり、機能未知の配列が保存されているドメインIVの4ドメインからDnaA蛋白が構成されていると推定した。 2.そこで、枯草菌DnaA蛋白のドメイン構造を生化学的に同定するために特異的なプロテア-ゼ感受性部位の有無を解析した。3種のプロテア-ゼ(Trypsin、V8protease、Endoprotease AspーN)を用いて精製した枯草菌DnaA蛋白の部分分解を試みたところ、40kdおよび32kdの部分分解産物が共通して得られ、そのNー末端のアミノ酸配列から、枯草菌DnaA蛋白には2箇所の、Nー末端から約100アミノ酸の位置とCー末端から約100アミノ酸の位置、特異的なプロテア-ゼ感受性部位があることが明らかになった。その位置は配列から予測したドメインIIとIII、ドメインIIIとIVの境界とよく一致しており、各ドメインを結ぶhinge領域と推定される。 3.さらに、ドメインIVがDNA結合ドメインではないかと推定し、その証明を試みた。限定分解産物を精製することが困難であったため、部分分解産物をnative DNA celluloseカラムによりDNA結合能を保持している産物と失った産物を分画したところ、ドメインIVがDNA結合に必須であることが明らかとなった。さらに、ドメインIVとマルト-ス結合蛋白とのハイブリッド蛋白を部分精製し、ゲルシフト実験を行ったところ、ドメインIVのみで特異的なDNA結合能があることが証明された。
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