生後3ー7日齢のラット脊髄腰膨大部から厚さ120μmの横断スライスを作成し、ノマルスキ-顕微鏡下に脊髄後角背側第1ー2層ニュ-ロンの細胞体を直視同定して、ホ-ルセル・パッチクランプ記録を行った。 サブスタンスP(SP、0.2ー2.0μM)を潅流液を介して、投与すると、細胞により、(1)コンダクタンスの上昇を伴う内向き電流、(2)コンダタンスの減少を伴う 内向き電流、(3)コンダクタンスの上昇を伴う外向き電流などが誘発された。この中、1の作用は、比較的再現性に優れ、第1層外側縁の大型細胞においてよく観察された。これらの作用は、いずれも、テトロドトキシシン存在下に観察されることから脊髄ニュ-ロンに対するSPの直接作用と判定される。 これらの後シナプス作用の他に、SPには、自発性微小シナプス応答の頻度を顕著に増加させる作用が、しばしば観察された。この作用は、SP投与中持続したが、投与を停止するとすみやかに消失した。SPは、おそらく神経終末端の受容体にも作用して、伝達物質の放出を調節するものと推測される。 1で観察されたSPの作用機構を解析した。電位固定下に、SPを投与し、投与前後に与えたランプ波コマンド電圧に対応する電流の差電流としてSP誘発電流を記録した。SP誘発電流は、およそ0mVで反転し、その電流・電圧関係は、ほぼ直線的であった。したがって、SP誘発電流は、専ら陽イオンにより運ばれると推測される。 1と同様の作用は、自律神経系の一次知覚を中継する延髄狐束核ニュ-ロンにおいて、一般的に観察された。ここにおけるSP応答の振幅は、後角ニュ-ロンでのSP応答の数倍ー10倍におよび、電流応答のピ-クにおいて、顕著なチャンネルノイズの増大が観察された。
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