1.スナネズミ海馬にみられる遅延型神経装胞死とシステインプロテア-ゼ:モンゴルスナネズミの両側総頸動脈を5分間閉塞負荷後、12、24時間、3、7、14日で潅流固定し、海馬を含む脳組織を採取した。海馬CA1領域の錐体細胞層では、カテプシンB、Lの免疫反応性は、負荷12時間後から上昇し、24時間、3日後には大小の反応陽性顆粒を含む神経細胞が出現した。この時期の神経細胞はプロテインカイネ-スC(PKC)に対する強い陽性反応も示した。7日後になると、システインプロテア-ゼやPKC陽性の神経細胞はほとんどみられず、システインプロテア-ゼの内在性インヒビタ-であるシスタチンβ、カテプシンH陽性の小細胞が錐体細胞層に、また、GFAP陽性のアストログリアの突起が錐体細胞層を鋏むように海馬白板と分子層から延びていた。14日目になると、カテプシンHやシスタチンβ陽性細胞は減少し、GFAPやビメンチン陽性のアストログリア細胞の突起で置き換えられていた。これらの結果は、CA1領域の錐体細胞は虚血負荷後初期から、システインプロテア-ゼの活性が上昇し、細胞死への第一の反応が生じるものと考えられた。さらに、3日から7日にかけ、神経細胞の処理にミクログリアが集積するものと思われた。このミクログリアのマ-カ-として、シスタチンβやカテプシンHが適していることが分かった。14日以降になるとアストログリアに置き換えられ、このグリア細胞はビメンチンにも陽性であった。 2.神経細胞におけるリソゾ-ムの役割:神経細胞にはリソゾ-ムが豊富に含まれる。システインプロテア-ゼの抗体で調べると、神経管を形成する以前の神経上皮細胞から、既に、豊富なリソゾ-ムを持つことが分かった。現在、この役割を追及中である。
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