研究概要 |
細胞内小器官の酸性化はATP駆動性プロトンポンプにより行われている。このポンプは、約10種類の異なるサブユニット(100k,73k,58k,40k,38k,34k,33k,19k,17k)より成る。本年度の研究においては、この複雑なタンパク質集合体のアセンブリ-様式について調べた。その結果、このコンプレックスをATP存在下0.3MK1処理すると、100‐38‐19‐17よりなるコンプレックスが残り、他のサブユニットがはずれることが明らかになった。このサブコンプレックスは膜貫通型サブユニットを含み、このユニットが、プロトンポンプの酸性小器官への局在化シグナルを担うことが示唆された。また、このサブコンプレックスは、被覆小胞膜中に完全なプロトンポンプとともに存在していることが明らかになり、その存在の生理的意義が今後興味が持たれるところである。 この研究と平行して、我々は脂溶性ビタミンの一つであるビタミンEの細胞内ソ-ティングに関わると考えられるタンパク質の精製および性状解析を行った。ビタミンEは、血漿リポタンパク質に結合して血液を循環するが、肝臓に取り込まれると、ビタミンE同族休のうちα型のみが再びリポタンパク質に結合して血液中を循環し、γ型は胆管側は排泄されることが最近報告された。我々が精製したビタミンE結合タンパク質の性質を調べたところ、肝臓にのみ存在すること、α型のみを結合すること、膜間輸送活性をもつことなどが明らかになった。この結果は、リポタンパク質に結合してエンドサイト-シスにより取り込まれたα型ビタミンEを、リソソ-ムから小胞体(VLDLと呼ばれるリポタンパク質が合成される小器官)へ輸送するのに、このタンパク質が関与することを示唆している。今後いかに、このタンパク質が、ビタミンEを小胞体へ特異的に輸送しているかが、興味深い点である。
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