研究課題/領域番号 |
03265214
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研究機関 | 大分医科大学 |
研究代表者 |
指吸 俊次 大分医科大学, 医学部, 助教授 (00019564)
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研究分担者 |
調 恒明 大分医科大学, 医学部, 助手 (50179058)
竹下 正純 大分医科大学, 医学部, 教授 (50019551)
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キーワード | 遺伝性メトヘモグロビン血症 / NADHーシトクロムb_5還元酵素 / 変異酵素 / 赤血球型 / 全身型 |
研究概要 |
遺伝性メトヘモグロビン血症は、患者組織中のNADHーシトクロムb_5還元酵素(b_5B)の欠損によって発症する常染色体劣性遺伝病である。現在本疾患は3型に分類されている。すなわち赤血球のb_5Rのみが欠損する「赤血球型」、赤血球のb_5R以外に全身組織のミクロソ-ム膜に結合したb_5Rも欠損し、知能遅滞や神経障害を伴う「全身型」、および血液細胞のb_5Rは欠損するが他の組織では欠損していないとされる「血液細胞型」である。本研究ではなぜb_5Rの欠損により上記のような様々な病態が発現するのかその分子機構について解明する。 本年度は患者白血球のDNA解析を行ない「赤血球型」の沖縄、鹿児島の変異はともにArg57→Gln、「全身型」広島の変異はSer127→Pro、横浜の変異はPhe298欠失であることが判明した。これらの変異を持つ種々の変異酵素を作り酵素活性と熱安定性を調べた。各変異酵素の活性(代謝回転数)Kcat・sec^<-1>は「赤血球型」の変異酵素Arg57→Glnでは野生酵素の60%であるのに対し「全身型」の変異酵素Ser127→Proは35%、Phe298欠失は32%でともに大きく低下していた。また50℃での熱安定性を調べてみると、野生型酵素は30分後でも85%以上の活性を保持していたのに対し、Arg 57→GlnとSer127→Proは30分後に約20%に低下し、Phe298欠失では5分後には完全に失活してしまい特に不安定であることが分かった。これらの結果から本疾患では各変異酵素の活性の低下の程度と安定性の低下により様々な病態が発現するものと考えられた。「赤血球型」で赤血球のb_5Rのみが欠損するのは、赤血球ではタンパク質合成がないため、不安定な酵素が失活および分解されるためであると思われる。「全身型」の変異酵素は活性の低下が著しく、タンパク質が常に合成、補充されている体細胞においても正常な機能を果たしえず発症するものと考えられた。
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