染色体にはミニサテライトやテロメアのような縦列型反復配列が存在し、この反復配列は相同組換えに起因する遺伝的不安定性を示し易い。中でもミニサテライトPc‐1、Pc‐2は一世代当り数%という高頻度の組換え変異を示し、組換えのhot spotとしての機能をもつと示唆されている。その組換えに寄与する一つのcis‐因子としてGGCAGG配列モチ-フを見い出したが、このモチ-フの機能を知るためにDNA構造の特徴および特異的に結合する蛋白質の有無を検討した。Pc‐2(6)を合成プロ-ブとし、サウスウェスタンブロッティング法でマウスの核抽出液(FM3A細胞)中の35kDaの蛋白質(Msbp‐4)を検出した。Pc‐2変異DNAを作製し、Msbp‐4の性質を検討する。精製には、ヘパリンカラム、PM‐G(6)DNAアフィニチ-カラム(Msbp‐4は結合しない)、Pc‐2DNA‐アフィニティ-カラムを用いてMsbp‐4を精製した。Msbp‐4をFM3A細胞からほぼ単一バンドにまで精製した。それは一本鎖DNAのcytosine‐rich鎖(Pc‐1(5)‐C、Pc‐2(6)‐C)に特異的に結合する性質を持っていた。Pc‐2の点変異DNA PM‐1C(6)(CGCAGGA)_6、PM‐3G(6)(GGGAGGA)_6、PM‐3T(6)(GGTAGGA)_6、PM‐5C(6)(GGCACGA)_6に対しては結合能が低下し、塩基配列特異性が示された。また、Msbp‐4はリン酸化を受けており、脱リン酸化によって結合能が変化することが示された。一方、テロメアの組換え変異については、生体内の体細胞では起こりにくく、培養体細胞の細胞分裂の間に起こり易いことが分かった。これは培養化すると、相同組換えの抑制機構がはずれ易くなることを示唆している。
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