本初度は、研究実施計画のA)ミュ-テ-タ-の本体の同定について研究を進めた。遺伝的にマップされたmutー5に最も強く連鎖していたTcl#40及びその隣接領域を含むプラスミドpIM40ー13と、dpyー20野生型遺伝子を含むプラスミドMH86を、dpyー20変異株に導入し、dpyー20に関して野生型に復帰した形質転換体を21系統得た。これらは、導入された2つのプラスミドより形成される多重連結構造を染色体外に維持していると考えられる。dpyー20株はTclの転位活性を持たないが、これらの形質転換体について、導入されたTcl#40により転位活性が回復したかどうかを、Uncー22遺伝子にTclの挿入が起こるかどうかで検討した。21系統について各々に約10^5個体をスクリ-ニングしたところ、Uncー22変異を1系統単離した。遺伝解析の結果、このUncー22が復帰する事が確認されたので、この変異がTcl挿入によるものである可能性が高まった。そこで、サザンブロット法により、Unc22遺伝子にTclの挿入が起こったかどうかを検討した。まずTclをプロ-ブとして、形質転換体の親株であるN2野生株、Uncー22変異株、及びUncー22復帰変異株のゲノムに存在するTclのパタ-ンを比較した。しかし期待される、Uncー22変異株に1つ余分に存在するTclを検出する事ができなかった。そこで次に、Uncー22遺伝子の約7割をカバ-する2つのラムダクロ-ンをプロ-ブとして、N2株とUncー22変異株のサザンブロットを比較したが、両者のパタ-ンは同一であり少なくともプロ-ブでカバ-されるUncー22DNA領域には、Tclのみならず、いかなる挿入因子も存在していない事が確認された。これらの結果は、Uncー22変異の遺伝解析の結果と予盾する。その説明としては、いくつか考えられるが、今後は再度同様の形質転換体を得て、Tcl挿入による複数のUncー22変異株が得られるがどうかを検討する必要があると思われる。
|