エンドセリンー1(ET)は、近年見い出された血管内皮の産生する生理活性物質であり、cDNAクロ-ニングにより全構造が明らかにされた。ETー1は新しい循環調節因子としてその機能が注目されている。冠動脈平滑筋を用いたこれまでの検討で、ETー1は、L型Caチャンネルの活性化とフォスホリパ-ゼC(PLC)の活性化を引き起こすことが明らかにされている。しかしtransmembrane signaling以降の収縮機構機序は現在までのところ、充分な検討が成されていない。本研究では冠動脈平滑筋を用いてETー1のトランスメンブラン情報伝達系以降の作用機構、特にCa依存性20KDaミオシン軽鎖リン酸化及びアクチンフィラメント側制御に関与すると考えられるカルデスモンリン酸化を検討した。張力はETー1投与後除々に増大し約10分後にプラト-に達した。MLCリン酸化レベルも除々に増大し、張力に先行して約5分後にプラト-に達し60分間にわたり高値を持続した。これとは対象的にKCl、ヒスタミで刺激した場合には、張力、MLCリン酸化の立ち上がりが速く1分以内に頂値に達した。ETー1投与5分後にはCDリン酸化レベルの変化は見られなかったが60分後には増加が見られた。ホルボ-ルエステル投与60分後にもCDリン酸化レベルの増加が見られた。KClはCDリン酸化に影響しなかった。ニトログリンセリンはETによる収縮を抑制した。弛緩に伴いMLCリン酸化レベルは刺激前値にまで低下したがCDリン酸化レベルは低下しなかった。以上の結果はブタ冠動脈平滑筋のET収縮におけるMLSリン酸化の重要性を示唆する。
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