研究概要 |
ノルエピネフリンを頻回投与した後に生じるノルエピネフリン収縮の減弱機構について検討した。収縮減弱は内皮依存性であり、NO合成酵素であるメチルアルギニン、アルギニノコハク酸によって抑制され、シクロオキシゲナ-ゼ阻害薬のインドメタシンでは抑制されなかった。このことはNO遊離の関与を示唆している。また、この収縮減弱はRNA合成阻害薬であるアクチノマイシンD,蛋白合成阻害薬であるピュ-ロマイシンによって抑制されたことより、蛋白生合成を介しているものと思われた。平滑筋のNOに対する感受性は変化がなかった。 大動脈リングをノルエピネフリンが存在しない条件で5時間インキュベ-トしても収縮減弱が生じた。このノルエピネフリンの頻回投与に無関係な収縮減弱もメチルアルギニンにより抑制された。またアクチノマイシンD,ピュ-ロマイシンによっても、これらをあらかじめ加えることにより抑制された。アクチノマイシンDおよびピュ-ロマイシンのIC_<50>はそれぞれ80nMと0.1mMであった。これらの阻害薬はアセチルコリンによる弛緩を抑制しなかったことより、EDRF合成酵素活性を阻害したり、平滑筋の弛緩機構自体を抑制する作用はないものと考えられた。さらに、ポリミキシンBにより抑制された事実は細菌内毒素の関与を示唆している。実験系に混在している細菌内毒素をpg/mlオ-ダ-にまで下げると、ノルエピネフリンの存在は有無にかかわらず、ノルエピネフリン収縮の減弱は生じなかった。細菌内毒素をオルガンバスに添加し、4時間以上経過すると再び収縮減弱が生じた。インキュベ-トする時間を24時間にすると、内皮をあらかじめ除去したものでも収縮減弱が生じた。これらの結果は、ノルエピネフリン収縮の減弱に細菌内毒素の重要な役割を示唆し、内皮の存在によって、収縮減弱が加速されることを示唆している。
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