血管壁細胞集団の組織化過程及び組識化された細胞機能のバイオメカニクス的研究は極めて少ない。 本研究では、 (1)二次元組織化(内皮化)及び三次元組織化(中膜)の人工モデルの開発と形成過程のバイオメカニクス (2)上記のモデルを階層化して内膜/基底膜/中膜を有する血管壁類似構造を人工基材上で形成させる血管壁再構築技術 (3)この再構築技術を用いるハイブリッド型人工血管の開発、生理的機能及び階層システムの優位性の動物実験による検証 (4)階層性組織体の機能評価と内膜傷害モデルへの応用。 具体的には、(1)に関しては、二次元組織化については単層内皮シ-トからの一方向性の組織化による内膜化速度を定量化すると共に、その細胞外マトリックスの依存及び流体力学的ストレスの内膜化に及ばす効果を調べた。三次元中膜層(人工中膜)はコラ-ゲン・酸性ムコ多糖の複合ゲルの中に平滑筋細胞を包埋し、形態形成及び力学的ストレスの依存性及び細胞外マトリックスの効果を調べた。(2)に関しては、人工基材上で人工中膜層を形成させた後に、コラ-ゲンを主成分とする基底膜を形成させた。ついで内膜を形成させて階層性組織体を構築する技術を確立した。(3)に関しては、階層性ハイブリッド型人工血管として動物実験によって内皮の非血栓性及び内皮/平滑筋細胞の相互作用による階層性組織体の生体内安定性を評価した。(4)に関しては、既に開発している物質透過性及び酸素消費測定法を用いて二次元及び三次元組織体の機能評価を行ない、補体及び白血球の内膜傷害をエネルギ-代謝、物質透過性の立場より明確にした。以上のように、細胞バイオメカニクスを主体として内皮及び高次組織体の機能と組織化を明らかにした。
|