「植物」と「食植性昆虫」と「天敵」の3者の系を明らかにする上で最も基本となる「植物のフェノロジ-」と、「植物の食植性昆虫に対する防衛様式」と、「植物上の食植性昆虫相」との関係を、アブラナ科植物を用いて調べた。各植物の単位面積当たりの現存量の変化を用いて確定したフェノロジ-は、4つに類型化することができ、各類型に応じて以下のことが分かった。 (1)初冬から早春に地上部を持つ一年生の植物は、フェノロジ-事態が防衛法であり、それ以外の民体的防衛法を持たず、食植性昆虫の発生期前に生長・繁殖期を終える。 (2)春の種子繁殖と、春と秋の2回、栄養繁殖期を持つ多年生草は、初夏の昆虫多発期に地上部に生育の断点を持ち、食植性昆虫により利用を防ぐ。このタイプを利用しているのは、夏眠などを獲得した少数のスペシァリストだけの可能性が示唆された。 (3)周年地上部を持ち、栄養繁殖を繰り返している多年生草は、昆虫の摂食阻害ないし成長阻害物質を持ち、食植性昆虫による利用を防ぐ。利用している昆虫は、わずかに数種のスペシァリストのみである。 (4)種としては周年地上部を持つが、個体の地上部の期間は短く、栄養繁殖と種子繁殖を繰り返す多年生草は、多くのジェネラリストの食植性昆虫に利用されていた。このタイプの植物の防衛機構は、何らかの化学的物質を用いて天敵を誘引し、誘引した天敵を用いて間接的に食植性昆虫を排除している可能性が示唆された。
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